拭渋 huki-shibu

原点

  • 『ぼくのしょうらいのゆめは、仏だんやになることです。』

     

    でも少し考えたあと、消しゴムで消し、

    その上に

     

    『やきゅうせんしゅ』

     

    と書きました。

     

     

    当時9歳

     

     

    そのプリントを家に持って帰り、母に手渡しました。

     

    母がケシゴムで消したうっすらと残る文字を見つけ、

     

    『あんた。仏だんやって書いたの消してあるけど、なんで消してもたんや?』

    と聞きました。

  • 僕は、姉と妹の三人兄弟の長男として育ちました。

     
    幼いながら、自分が家業を継いでいくんだ。

    と、なんとなく意識して育ったような気がします。

     
    その頃私は「仏壇屋」という少し変わった仕事をしている親が、
    なんとなく嫌な時期がありました。

  • 『だって....恥ずかしいし。』

     

     

     

    あのとき母にそう言ってしまったことを、今も後悔しています。

     

     

     

    ある日父に連れられ、お仏壇の納品に行きました

     

    綺麗になったお仏壇を、待ちに待ったご家族の方の中に、ひとりおばあさんがいました

     

    どうやら、先立ったおじいさんの法事をつとめるので

    お仏壇の修復を父に頼まれたよう

     

    奥からゆっくりと出てきて座り込み、お仏壇に手を合わせ

     

    『ありがとう...ありがとう...』

     

    と、ボロボロと涙を流しながら

    父に何度もお礼を言っていました

      

    『仏壇屋ってすごいお仕事だな。』

     

     

    子どもながらに、誇らしい気持ちでいっぱいになったのを覚えています

『漆無料プロジェクト』

  • 『漆のことを知らない方に、まず手に取ってほしい』

    『そうすれば、漆の魅力は必ず伝わる』


    そんな想いから、2020年11月『無料漆プロジェクト』を始動しました

     

    これは、GNU【ヌー】設立に至った

    原点であるプロジェクトです


    預かったナイフに4ヶ月かけて漆を十数回に渡り塗り重ねました

  • ありがたいことに物凄い反響を呼び、たくさんの方に魅力を伝えることができました

     

    そして、感謝のお手紙をいただくまでになりました

  • あのときの父の背中を見て育った私は、今もこの仕事に誇りを持ち続けています

     

    泣いて喜んだおばあさんのように

     

    ”一人でも多くの人を豊かな気持ちに”

     

    今回つくったナイフは、そんな想いで漆を塗りました

『拭渋huki-shibu』

  • パッケージに刻んだのは、

    『拭渋huki-shibu』

     

    命名したのは、プロジェクトの背中を押してくれた中村さんです

     

    「おまえのつくったモノを手にした人のことを想像しろ
     
    その人の元に届く瞬間
     
    家やキャンプで使ってくれる瞬間
     
    大切な人に贈る瞬間」
     
    「全てを想像し、想いをモノに全力で注ぎ込みなさい

    そしたら人は、必ず応援してくれるよ」

日本の刃物 × 漆

  • 鍛冶の町として知られる兵庫県三木市の

    "神沢鉄工株式会社"が

    2018年『FEDECA』を設立

  • 拭渋開発のきっかけをいただいたのは、

    ブランドマネージャーである"浅郷さん"でした

     

    浅郷さんの人柄の良さは、写真やインスタの発信を見ての通り

    ( @mijika.vanlife )

     

    家族の笑顔とおしゃれな軽バンの写真には、たくさんのファンがいます

  • 「僕たちは、日本の”刃物”を通して、

    ”削る楽しさ”を、子どもたちやその親の世代に、とにかく伝えたい」

      

    「楽しいんですよ。刃物って。

    ワークショップでみんなで削ってる時がほんとに楽しい」 


    嬉しそうにお話されるその言葉には、強い信念と、

    家族を大切にされている人柄の良さが伝わってきました

     

     

    仕事熱心で愛情深い浅郷さんが作るナイフを、

    僕は使いたいし、大切にしたい 

     

     

    そして、そんな人が作るナイフに漆を塗らせいただけることを、


    心から幸せに想います 

     

      

    『拭渋huki-shibu』

     

     
    「漆文化を広める」という確固たる信の元
    トモさん、FEDECAさん、そして家族みんなの想いをのせた

    大切な作品です