URUSHILK SCREEN
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漆の魅力を肌で感じでもらいたい『GNU』中川さんの想い__
今回行われたのは、版画の一種であるシルクスクリーンに漆を垂らし、スキージーと呼ばれる専用のヘラでデザインを写す体験です。
通常、シルクスクリーンはインクを使って壁や布地にデザインを施すものですが、あえてインクを漆に変更しました。
中川さんは、「漆はかぶれるから扱いづらそう」というネガティブなイメージが根付いてしまっていることを懸念。
そこで体験前には、漆の元となる原木を用意して防水性や防腐性といった特徴についてを紹介しました。
ワークショップを通じて、知られていないような魅力に気付いてもらい、もっと身近なものにしたい。
そう願いが込められたイベントとなっていました。
また、「初めて漆について知りました」と言ってくださる方や、シルクスクリーン用に独自調合した漆を見て「普段の漆と違う!」と違いを発見された方もいたそうです。
GNU・中川さんは日々、漆そのものや漆が塗られたアイテムをSNSなどで公開し直接肌で感じてもらえるように工夫を凝らしていますが、まさに今回のワークショップも、目で見て漆というものを実感できるようになっていました。
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漆の概念を塗り替える、今までにない新しい試みを__
漆は本来、木製の食器や仏具に塗るもの。
だから、アウトドアグッズやシルクスクリーンに塗るのは違うんじゃないか。
果たしてそれが日本の文化継承になるのか。
と、漆を広めたいと思ったときに戸惑いも感じたのだそう。
しかし、中川さんはあえて漆の概念をくつがえすべく、木に塗る以外の新しい使い方、今までにないものを探し求めました。
GNUとして活動を始めたばかりの頃は名刺に塗ってみたり、ガラスや樹脂、革に塗ってみたりと、とにかくさまざまな物に試し塗りしたそうです。
そしてある日、知人が開催しているシルクスクリーンのワークショップに漆を持参し、チャレンジしてみることに。
それを自身のInstagramで広めると大反響。
たくさんの方から背中を押してもらい、ちょうど1ヶ月後に控えていたワークショップイベントでぜひやろう!となったそうです。
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中には、コンダクターズチェアと呼ばれるイスの座面に漆を刷りたいと希望された男性もおられました。
その方は過去、GNUが行っていた漆塗りの愛用品企画にも参加されていたそうです。
企画中は中川さんがチェアを預かり、じっくりと2~3カ月かけて骨組み部分となる木材に漆を塗布。
今回のワークショップでは、その男性が直接チェアをお持ち込みし、自分の手で座面部分にシルクスクリーンを施されました。
“コンダクターズチェア”という名付けに携わった思い入れのあるアイテムだったので、より愛着が増したと喜んでおられたそうです。
また、大盛況に終わったイベント後、中川さんは体験者の方々の笑顔を振り返り、アパレルアイテムに漆が使われる可能性を見い出しました。
「今後もチャレンジを恐れることなく、定期的にワークショップを開催していきたい」とも、彼は語ります。
『GNU』として進む道の先には、果たしてどんな素敵なモノが待ち受けているのでしょうか。
期待は膨らむばかりですね。
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web writer 大野 千春