漆刻 shi-kkoku

漆刻誕生秘話

  • GNUをはじめて今でちょうど一年。

    この期間は人生で最もいろんなことを学ばせてもらいました。

     

    中でも"家族"について沢山考えさせられた一年でした。

     

      

    さかのぼること2021年4月。

    これは度々言ってきましたが、無償で漆を塗るプロジェクトをはじめた頃は、業界の一部からいろんなことを言われ続けました。

     

     

     

    「漆にこだわるのもいいが、これからはそれに変わる塗料を使うこともかんがえていかんとな。」


    「そんなことばっかりやってても仕事にならんやろ?」


    「漆の安売りちがうか?」

     

     

     

     

    継承とはなにか?

     

     

     

    薄れゆく文化と風習。

    古来日本人が最も大切にしてきた「伝統と継承」

     

    今まで大切に受け継がれてきたものを、どう次の世代に受け継ぐのか。

     

     

    これを考え、行動するのが伝統工芸を担うものの使命だと思います。

     

    それを形にしようといくらもがいても、

    周りの仲間からはいい目で見られないこともあります。


     

     

    でもこれは誰が悪いわけでもない。

    チャレンジには、「応援」もあれば「批判」もあります。

     

    でも追い風は、思った以上のものでした。

     

     

    このまま活動を続けるか。悩みに悩みました。

  •  

    そんな時、親父は何も言わず、黙々と仕事をしていました。

     

    曲がったことの大嫌いな頑固一徹。

    昭和の親父。

     

      

    これと決めたことは絶対に曲げない。

    よくアニメで出てくる職人の親父そのものです(笑)

    笑えるくらい。(笑)

     

     

      

    小さい頃から礼儀に厳しく、家族に対しても「おはよう」は言わないと、朝から雷が落ちてきます。

     

    お箸の待ち方が違うと、ご飯を食べさせてもらえません。

     

    いつまでも泣いていると、夜中にもかかわらず、外に放り出されます。

     

     

     

    そんな親父が、私が漆を無料で塗ることに対して、何も言いませんでした。

    これは私にとって一番心強い"応援"でもありました。

     

     

    親父が何も言わないなら、続けてみよう。

     

    毎晩ひたすらナイフに漆を塗り続けました。

     

  • ある日、

    嬉しい出来事がありました。

    ワークショップを開催したときのことです。

     

    親父がこっそりやって来て、部屋の片隅で動画を回していました。

    参加者の楽しむ姿を、親父は嬉しそうに撮影してました。

     

     

    その姿を今でも忘れられません。

     

    帰ると母に、動画を見せていました。

  • 最近、機械音痴の親父が、Instagramをよく見るようになりました。

     

     

    母いわく、みなさんの漆のチャレンジ投稿や、コメントにいたるまで全部、

    くまなくチェックしているそうです。

     

    身に覚えある方も多いかと思いますが、たまにくる知らないおじさんからの

    コメントへの"いいね"は、ほとんどがうちの親父です。笑

     

    (たぬきぽんぽこ。変なアカウント名からのいいねは注意してください。笑)

     

     

     

    今回instagramで募った『ホスィ』の数が過去最高数。

     

    親父にそのことを伝えると、またあのワークショップのときのように、嬉しそうに笑っていました。

  • 大切なコレクションである"銘木"

    本当にいい材料なので、私も使わせてもらったことはありません。

     

    でも今回、いい材料も眠らせておいても仕方がないと、

    親父がそれを使ってまな板を作りました。

     
     

    その名も、「漆刻 shi-kkoku」

     

      

    カネイ中川仏壇は親父で4代目になります。

     

    -正直に真っ直ぐ、人に向き合う。-

     

    それが屋号である"カネイ"の"カネ"込められた意味です。

     

     

     

    初代から続くその想いを、

    漆の中に刻み込む。

    そんな意味を込め、名付けました。

     

    今回も命名は友さんです。

    ありがとうございます。

     

    売れようが売れまいがどっちだっていい。

    応援してくれる人だけに届けばいい。

     

    親父は満足そうに今日も笑ってました。

     

     

    4代目塗師 中川 正

     

    親父が魂込めて作ったものが、「漆刻 shi-kkoku」です。